2012年12月22日土曜日

「縦書き不要論」について

Nothing ventured, nothing gained.「縦書き不要論」(http://d.hatena.ne.jp/takoratta/20121222/1356187316)より

ここでは極端な仮定をして考えてみよう。縦書きが無くて、すべて横書きだった場合に困ることはあるだろうか?

読みに関しては、無いと思う。

確かに、日本語については縦書きで運用してきた歴史的な経緯があり、縦書きで書かれているものを読む機会が未だに多い。何と言っても国語の教科書が縦書きで書かれているので、ほとんどの人が幼少のころより縦書きになじんでいる。
また書籍で比べても多分まだ縦書きのものが横書きのものよりも多いと思われるし(雑誌や技術系書籍を除く)、大手新聞はほぼ縦書きである。
なので、普段からほとんど横書きの文章を読み書きしている人達以外は、縦書きに対する執着心が強かったとしても以外ではない、と思う。

記事中で及川さんが述べられている通り、
書く場合には、その筆順を考えると、縦書きのほうが効率的だ。漢字も仮名もどちらも上から下への筆運びで、筆順が始まったり、終わったりする文字が多い。
ので、書き手から見ると縦書きが自然であろう。同じようにアルファベットなら横書きが自然であろう。ただし、それは手で書く場合(アルファベットの場合は筆記体で)に限る。
キーボードで入力するなら、慣れだけの問題だろう。

読みについてはどうだろう。端末上で見るなら横書きの方が良い、とおっしゃる御仁もいるようだが、それは現在市場に出回っているディスプレイが横長なので横書きが自然なだけ。
タブレットだと縦長に配置できるし、タッチによる操作によって縦書きのテキストをめくるように読むことは全く自然でどこが問題なのか分からない。つまり今後は縦書きのレイアウトやそのためのプラットフォームの実装が進化する可能性も高い。
しかし全世界を考えれば横書き文字のみで成り立つ地域の方が多分マーケットも広いから、どこまでいっても縦書きのシステムはマイナーな地位にとどまるのだろう。

縦書きについても、そのような科学的な検証を行い、活かすべきものは活かし、横書きへ移行すべきものはする。それが、縦横という表現方法のあり方を超えて、文字データの有効活用へと繋がっていく。

私の認識としては、及川さんとは少し違うのだが、縦書き、横書き、どちらかに強制するのは無理があるが、 現時点では「コンピューター上でレイアウトを実装するには」いろいろな意味で縦書きの難易度が高く、それでも必要な時はその前提を踏まえた上で頑張ってやってみてくださいね。だろうか。

私個人としては、すでに横書きにあまりに慣れてしまっていて、縦書きの長い文章を読むのは疲れる。文庫本だけは仕方が無いので許す(まさに及川さんが写真つきで説明されている通りです)。



2012年12月12日水曜日

今更固定電話は必要なのか? その3

このシリーズも第3回になってしまった。
今更固定電話は必要なのか? その2」の投稿後、TechCrunch Japan にこのような記事がアップされた。
これまでの電話回線網を完全に廃品化へ: IPインフラ万能の時代に向けてFCCが法制整備を始動
AT&Tからの陳情を受けて、FCC(まあぶっちゃけ政府)もこれまでの回線サービスについての規定を撤廃する方向で動いているらしい。AT&Tからすれば、「AT&Tは今後、ケーブル企業と同じように、業種業態を「情報サービス」と見なされたい。PSTN (public switched telephone network, 公衆電話交換回線網)という古い業種業態定義は、永久に返上したい。と同時に、電話サービスとしての社会的公共的義務(Carrier Of Last Resort)の規制からも、自由になりたい。」ということですな。

かといって政府がはいそうですかと規制撤廃の方向に動くというのがアメリカらしいといえばアメリカらしい。というか日本ではなかなか難しいでしょうと思うのは偏見か?

アメリカは広いので、人の住んでいるところにくまなく同一レベルの回線サービスを提供し保守し続けるのはものすごく高くつく。だったら積極的に技術革新を取り入れ、結果としてより良いインフラを提供することが国民の利益になる、という考え方だろう。
日本ほど「すべての国民が等しく高レベルのサービスを享受できなければならない(できなればサービスするな)」という思い入れがないのも良いかも。

AT&Tとしては、規制を取り払うことでメリハリをつけた投資を行うことが可能となる。
TechCrunch の記事にある通り、現状さまざまなバックボーンが入り乱れており、これまでの投資を考慮しつつ適材適所で増強を行っていく事になるだろう。Last One Mile (それぞれの家への回線の引き込み)はこれまで通りメタルの所もあれば、ファイバーを直接入れるところもあろう。最終的にはファイバーか無線に落ち着くのであろうと思われる。

個人ユーザーとしては、前回書いた通りもう固定回線にこだわる必要も無いかな、と感じるようになってきており、この変化も特に問題にはならない。
いっそのこともう全部携帯でもいいかな、とも思うし、これまで避けてきたケーブル会社の電話サービスを使ってみても良いかなと思い始めてきた。ケーブルが切れても携帯はあるし、多分どっちも不通になる状況だともう何をやってもだめだしw。
ただしこれは音声通話に限っての話。データ通信まで考えれば絶対にFTTHが有利。 とはいえ、いくらデータの帯域が上がっても音声通話は別会計のまま。もしも今回規制が外れれば、ひょっとするとVoIPを使うという条件で音声通話(料金)もデータ通信(料金)に包括されるかも、という期待を抱いている次第。





2012年12月2日日曜日

今更固定電話は必要なのか? その2



今更固定電話は必要なのか?」で「家族の代表電話として、そして緊急時のインフラとして」必要であるという結論に達してからまだ1ヶ月も立たぬうちに、その思念を揺るがす記事を紹介された。

AT&Tのネットワーク近代化計画Velocityの意味(1) 」から始まる3回シリーズで、執筆はここベイエリア在住のITジャーナリストの小池良次さん。小池さんには JTPA でアメリカの通信業界各社のクラウド戦略についての公演を聞かせていただいたことがある。通信会社にとってのクラウドコンピューティング+SNSの位置づけと戦略的価値をとても丁寧に解説していただき、貴重な時間を過ごさせていただいた。

この連載記事では AT&T が固定電話の導線を全国規模で固定ブロードバンド(FTTH)かLTEに置き換えるという計画、およびその Verizonとケーブルプロバイダー各社との比較を解説されている。

その中で最も気になる点は、やはり「アナログ電話サービスの終了」だ。「アナログ電話は、日本でも米国でもデジタル交換機の寿命が2015年から2020年前後に終わる。新しいデジタル交換機は製造されていないので、アナログ電話サービスは終了しなければならない。」ということらしい。それまでに、アナログ回線の端末は破棄してブロードバンド対応のモデムや端末、もしくは無線に切り替えなる必要があるということだ。

そうか、いくら自分としては停電対策用に旧式の電話を保持したいと思っても最長で2020年までしか動かないのか」と考えると、ここら辺で回線の乗り換えを考えても良いかな、という気になってきた。

記事の中で紹介されていた「LTEを使ったアナログ電話代替サービス」は非常に魅力的だ。「AT&T社の携帯契約を持っていれば、A&T Wireless Home Phoneは月額9.99ドルの追加費用で利用できる。」現在我が家のAT&T固定回線は国際電話のプランが入ってはいるものの毎月50ドル以上チャージされているので、番号が同一で支払いが5分の1になれば非常に助かる。
また接続の安定性を重視するなら Verizon のサービスを使った方が良さそうだ。屋根にアンテナをたてるらしい。それでなくても Verizon の LTE は我が家で Wifiルーターを試験的に使ってみた時に各部屋での安定性を実証済みなので信頼できる。
こちらにするべきなのか。

ともあれ、そろそろアナログ固定電話もお払い箱かなあ(ちょうどいいタイミングでワイヤレス親子電話機の調子も悪くなってきたし)、と考え直している最中だ。




2012年11月26日月曜日

アメリカのスマホは黒ばかり?

まずはこの写真を見てほしい。



これは Best Buy という、日本で言う家電量販店の最大手が作っている携帯電話のカタログの中の一覧表である。2、3の例外を除き端から端まで、ほぼすべての電話会社について、携帯電話/スマホの色は真っ黒たまに白、である。

我が家に送られてきた AT&T の広告紙でも、こんな感じでほぼ真っ黒である。



Best Buy の実店舗の携帯売り場に行くと、やはり色は黒一色で、一見ほとんどモデル間の見分けがつかない。黒でない、という印象があるのは、最近だと HTC One X (白のイメージ)、Samsung Galaxy シリーズ (グレーのイメージ、なせだろう?)くらいで、後は黒しか目立たない。あの iPhone でさえ、黒と白しか無い。

一方、日本のスマホはカラフルだ。例えばどこものページを見ても、黒一色ということはあり得ない(http://www.nttdocomo.co.jp/product/2012_fall_feature/index.html)。

この違いはどこから来るのだろう?

一説によると、アメリカでは圧倒的に黒が売れるということがマーケティング調査ではっきりしておりで、製造台数が少なければ色を分散させるより無難な黒にしておくのが吉、という。

その結果がページ最初にあげた一覧のような状況を作ってしまっているとしたらあまりにもつまらない、と個人的には思う。

周りが黒ばかりだから、逆にここでその他のカラーを展示すれば個性が際立つと思うんだけど...でもそれが必ずしもよい方向に働くとも限らないか。


アメリカ人でも同じことを考えている人はいるようで、こんなブログ記事を見つけた。
http://www.phonedog.com/2012/04/20/htc-talks-strategy-behind-smartphone-colors-why-carriers-won-t-offer-some-shades/

本文よりもコメントが面白くて、みんな結構勝手なことを言っている。もっとカラーバリエーションを増やせ!という意見もあるが、カラーは安っぽく見えるからいやだ、とこだわる人もいる。競合の電話会社のロゴのカラーを使わせたくないからだ、という意見もあるがこれはさすがに無理筋だ。

面白いのは黒以外だと画面に集中できないという意見。これは一瞬ありかなと思ったが、以前カラーモデルを使った経験からすると画面に表示されている内容によって印象が良くなったり悪くなったりするので一概には言えない。ただし現在ほとんどの機種が黒ベースならコンテンツもそれを前提に作られているだろうから、やはり黒がベストということになって、ロックインされてしまうかも。

私の周りには黒はいやだという人や赤青等のカラーが欲しいという人がかなりいるのだが、マジョリティではないのかなぁ。

個人的には上品な青かグレーが欲しい。 あと夜中に蛍光で置き場がわかること!







2012年11月21日水曜日

プロジェクト中止に伴う痛みは和らげられるか?



Cnet に「プロジェクトを途中で打ち切る際の痛みをやわらげる10の方法」という記事が掲載された。
その10の方法とは次のような物らしい。
#1:プロジェクトの打ち切りという選択肢をあらかじめ戦略に含めておく
#2:打ち切りは早いうちに、しかし早すぎないように
#3:プロジェクトの代替策を用意しておく
#4:プロジェクトを妨害活動から守る
#5:投資を行う前にベンダーとともに事前調査を行う
#6:打ち切りが難しいプロジェクトは、適切な部署で実施するようにする
#7:責任を受け入れる
#8:経験から学ぶ
#9:コンセンサスを得る
#10:ポジティブな態度を維持する

確かに、これらを実行すれば痛みはいくらかは和らぐかもしれないが、それは100%が95%程度に微減するくらいの物だろう、というのが正直な感想だ。

Project Manager として、すでに開始されたプロジェクトの中止の経験はある。自分が中心となって打ち切ったケースもあれば、突然天の声で中止が決まったものもあった。
自分が中心となって中止を決定したケースでは、上記10項目のうち、最低5項目は満たしていたはずだ。それでもその痛みがいささかでも軽くなったとは思われない。

なぜプロジェクトの打ち切りがかくも痛みを伴うのか、人によっても様々な考えがあるとは思うが、私に取っては次の2点が最も深刻である。

1. 喪失感。プロジェクトメンバーにとってそのプロジェクトが重要な物であるほど、喪失感は大きい。メンバーが一体となって目標を共有し、感情を共有し、時間を投資することはプロジェクトの成功に取って不可欠であるし、それがうまく行われるようにProject Manager が調整を行う。うまくいっているプロジェクトほどメンバーは思い入れるようになるし、よりプロジェクトがうまく回るようになって行く。ここで突然すべてが失われると、その喪失感から立ち直るためにはそれなりの時間が必要になる。


2. 雇用の問題。アメリカでは前から、また日本でも最近では同じかもしれないが、雇用の問題は生活に直結する。プロジェクトが中止になると、メンバーの職は非常に危うい状況になる。他の仕事が無い場合はすぐに解雇の可能性が高くなる。あらかじめ予見できていれば職探しもできようが、突然の場合は上記1で説明した喪失感も加わって精神的に非常に辛い。

私個人としては、メンバーをプロジェクトに引き込み一心不乱に作業をしてもらった(もしくはそうなるようにリードした)ことに対して道義的責任を感じてしまう。性格によってはすぱっと割り切れる人もいるかもしれないが、私の場合はけっこう引きずる。

とは言うものの、面白く挑戦しがいのあるプロジェクトの方が中止される可能性が高い物なので、Project Manager としてキャリアを積んで行く中でプロジェクトの中止を経験することは必然である。なので、そこまで織り込んでそれも含めて引き受けるのが Project Manager の仕事、なのであろう。
正直なところ、またそのような状況に見舞われるのはごめんだが。




2012年11月10日土曜日

今更固定電話は必要なのか?

マイナビニュースの(なぜか)携帯セクションにこのような記事が掲載されていた。

「AT&Tが間もなく電話事業から撤退か、今後3年で携帯とブロードバンドに集中」
 http://news.mynavi.jp/news/2012/11/10/021/index.html

元ネタはこちら
wsj.com: AT&T Move Signals End of the Copper-Wire Era
http://online.wsj.com/article/SB10001424127887324439804578104820999974556.html

どうやらAT&Tが銅線のネットワークを廃棄し、Broadbandサービスに集中するようだ。家庭電話はもちろんブロードバンドを使ってこれまでの電話番号等も含めて移行させる予定なのだろう。

我が家も固定電話はAT&Tを使っており、携帯と請求書は別になっている。

実は日本からこちらに引っ越してきた時、本当に固定電話が必要かどうか考えてみたことがある。しかし突き詰めること無く AT&T に加入してしまった。

日本で暮らしていた時は、固定電話の電話番号が無いと何かと不便で、例えばクレジットカードに加入する時とか配達をお願いする時とかに携帯電話の番号だと受け付けられなかった。なので固定電話を持たないというのは一家の主としては受け入れがたい物だった。今は携帯電話の番号で問題ないのかもしれない。

そのような状況だったので、アメリカに引っ越してからも固定電話を持つのは当たり前、という感覚もあった。 ただ、こちらで何かに加入するとか書類に連絡先を記入する際には、固定電話の番号が必須というのはあまりない(確か1回だけ合った気がする)。多分電話番号をさっと見ただけでは固定電話と携帯電話の区別がつかないからだろう。
日本では携帯電話と固定電話では市外局番が異なる。こちらでは携帯だろうと固定だろうと(ほぼ)登録住所によって市外局番が決定し見た目の区別がつかない。

では何のために固定電話を死守しているかというと、大きく2つの理由がある。

1つめは、家族としての電話番号を持つため。例えば携帯電話だと、夫婦共通の友人が妻と夫のどちらの番号にかけるかを悩むことになる(だろう多分)が、固定電話だとどちらがとっても良いので電話をかけてくる人にはとてもフレンドリーである。何かの名簿に載せる場合も家族にその番号1つですむ。しかしこれは携帯電話でもそれなりに同等の機能を実現できそうだ。

 2つめは停電対策である。この辺りは停電が非常に多い。強い雨が降ったらまず停電する。その場合でも、電源を電話線から取るローテクな電話を繋げば通話可能だ。我が家では普通は子機付きのワイヤレス電話機を使っているので停電時には使えなくなるが、いざという時用におもちゃの電話を持っている。おもちゃだが電話線をさせばちゃんと機能するので、じつは停電時にはこの電話が最も使えるものなのだ。携帯電話だと端末のバッテリーが切れるとそこまでになってしまう。

おっと、もう一つ理由があった。残念ながら AT&T Wireless の通話音声品質があまり良くないので、長時間の電話会議には固定電話の方を使いたい。
 

マイナビニュースの記事でも触れられていた通り、今回のハリケーンSandyの災害時には公衆電話が威力を発揮したという。いざという時にはローテクのモノの方が頼りになったりすることもあるので、個人的にも社会的にもなかなかすぱっとは移行できないのではないだろうか。



2012年11月5日月曜日

iPhone 5 は普通のスマホになってしまったのか?ーその4

本当に「その3」で完結させるつもりだった「iPhone5は普通のスマホになってしまったのか?」シリーズなのだが、本日、michikaifu さんの「iPad miniでアップルの「ぶっちぎり感」がないのはクラウドのせい」を読んで、その通りだとおもったので「その4」を付け加えることにした。

これ、iPhoneでもそっくりそのまま当てはまる。現在、ユーザーが使うサービスも扱うデータも片っ端から次々とクラウドベースに移行されつづけている。データ通信さえ使えれば、ローカルにはほとんどなくてもよくなるくらいの勢いだ。

一旦クラウドベースな環境に慣れてしまうとどの端末からでも同じサービスが利用でき同じデータにアクセスできるため、端末の選択をする際にはデザインが決め手となるだろう。見た目のかっこよさ、軽さ、薄さ、操作のしやすさ、というところか。
いくら iPhone がもともと独創的なデバイスだったとしてもそれは過去の話で、現在は数ある選択肢の中からデザインと価格を考慮して選ぶ対象にしかなるまい。この観点から見ると、「その2」で取り上げた高校生の行動は非常に合理的で、iPhoneはカッコいいけど高かったのが、価格が下がったから手に入れたという、身もふたもない話だ。

この説が正しければ、iPhone よりも格好いいデバイスが出現し、かつ価格も安ければ、iPhoneの売り上げが伸び悩んでしまう可能性は高いということになる。

現実にはそこまで単純でもなくて、一旦 iTunes などで環境を構築した人はスイッチングコストが高すぎてなかなか移行できない。しかし音楽に関してはGoogle も抜け目無く Google Music Match を導入して Apple の iTunes Match に対抗し、シームレスな移行を画策している。これがうまく行けば、例えばある日iPhoneからAndroidスマホに乗り換えても今まで持っていた曲は自動的に環境ごと移行される、という状況もあり得る。(ゲームについてはどうなんだろう?詳しい方教えて下さい)

Apple にとっては、iPhoneよりもカッコいいデバイスが発売されるー>そのデバイスの価格がとても低くなるー>ユーザーのデータがそのデバイスからでも問題なく使えるようになるー>じゃそっちでいいや、 というシナリオは怖いだろうが、多分状況はこの通りに動いて行くと予想する。

がんばれ Apple! 

2012年11月4日日曜日

iPhone 5 は普通のスマホになってしまったのか?ーその3

「普通の中の普通、普通の王道」であるかもしれない iPhone の過去の売り上げの変化は次のようになる


(*1 http://en.wikipedia.org/wiki/File:IPhone_sales_per_quarter_simple.svgのデータによる)

Apple社の Fiscal Yearは10月から始まるので、Q1が10月から12月、Q4が7月から9月である。売り上げがジャンプしている2008年のQ4には iPhone3Gが、2009年のQ4にはiPhone3GSが2010年のQ4にはiPhone4が発売されている。
2011年のQ4には売り上げは伸びておらず2012年のQ1にずれ込んでいるが、これはiPhone4Sの発売のタイミングが例年よりも後だったためだと考えられる。

このグラフから分かる通り、新しいモデルが発売されるたびに飛躍的に売り上げを伸ばしている。iPhone5についてはデータが無いが、発売直後1週間で500万台は出荷された訳なので、各Quota が12週間あることを考えれば、2012年のQ1と同じかそれ以上の売り上げにはなるのではなかろうか。

もちろん今後どれだけ売り上げが伸び続けるかは誰にも分からないのだが、少なくともすでに一部のマニアやギークのみが買っているフェイズではなく、多分いわゆる普通の人が購入の大多数を占めていると思われる。普通の人、というのは「新しい物大好き。新しい物を使うためには苦労もいとわない」ではなく「めんどくさいのはいや。なるべく簡単に用事を済ませたい」というメンタリティを持つ人であり、「この辺りでは誰も持っていないクールなデバイスを買った俺最高!」ではなく「他の人も使っているから安心」というメンタリティを持つ人のことを指す。マーケティング用語でいうと「アーリーマジョリティ」から「レイトマジョリティー」のカテゴリに属する人達と言ってよい。

売り上げの推移だけを見て判断するのは危険だが、前回の投稿で紹介した高校生の実態や前々回で紹介したiPhon5を購入した人達の感想から考えると多分当たっているのではないかと思う。






以上、3回に渡って iPhone5は普通のスマホかどうかについて考察してきた訳だが、まとめると

疑問「iPhone5は普通のスマホになってしまったのか?」
結論「iPhone自体が普通の人が購入するスマホになっている。よって普通のスマホだと考えて良いと思われる」
理由「売り上げ推移および新規購入に関する動機を見ると、すでに普通の人が普通の感覚で購入するフェイズに入っていると考えられるから」


初代iPhoneはそれまでにないスマートフォンのスタイルを提示して新しいモノ好きの人達に熱狂的に受け入れられた。iPhone3Gによって3Gデータ通信がサポートされ実用的に使える物となったが、それ以降の進化については、根本的なユーザーの生活を変えるイノベーションを提供するというよりは漸進的/改良的なイノベーション(言い換えれば痒い所に手が届く改善)を繰り返しており、ある程度「こういう風に使うもの」というモデルが確立してきた。そのため普通の人も問題なく使え、むしろあまり奇をてらったものが嫌われる状況になってきたのであろう。

従って、私の周りの新し物好きが「あまりしっくりこない」「夢中になれない」という感想を抱くのは自然であり、高校生達が安心して購入するのもまた自然だ。

今後ますますAndroidスマホとの競争が激しくなり、モノ自体は確実に良くなっていくだろう。
ただし個人的には少し寂しい気もする。スティーブジョブズ亡き後の Apple は、再び私たちをわくわくさせてくれるようなイノベーションを起こすことができるのだろうか。


2012年10月29日月曜日

iPhone 5 は普通のスマホになってしまったのか?ーその2

そのとある女性の衝撃的発言とは!!

「私のまわりはみんな iPhone 持ってるよ。新しく買う人達もほとんど iPhone!」で「ほかのスマホを持ってるととっても珍しがられるよ!」

その女性とはずばり私の高校生の娘である(*1)。

このあたりの高校では、部活の連絡はもちろん、下手すると授業の宿題のやりとりまで Facebook 上で行われる。 なのでネットへの接続性は高校生にとっても必須なのだ。
宿題や長いメールは家に帰ってラップトップとかを使うとして、そうでない時にはそこそこラップトップの代わりにもなってデータ通信できる携帯でバイスが欠かせない。

それは分かるが、なぜ iPhone なのか?

「まず iPhone はもうみんな持ってるからいざとなったら使い方とかをすぐに聞けるし、他の人が使っているのをみて何が出来るかもすでに理解できてる。別のスマホだと他に持っている人がほとんどいないから何かあったときに安心できないし。」
「iPhone 5 発売前は iPhone 4が、発売後は iPhone 4S が安くなって、高校生でもなんとか買える値段になったのが大きい。今だったら iPhone 4 は実質タダだし(*2)。別に iPhone だったら最新機種でなくても良いから。そのくらいの値段だったら、Android スマホだとださいのしかないんだよなー。」(*3)

中学生の時に使っていたテキスト端末(フィーチャーフォンでハードキーボードがついているスライド式のもの)から買い替える時に iPhone にアップグレードするのがトレンドのようだ。

キーポイントは2つある。

1つめ、彼らにとって iPhone は使いやすいからとか高機能だからだとか直感的操作が可能だから選択するものではないのだ。単にみんなが使っているから使うのだ。

2つめ、安いからといってださいものを使うのはいやなのだ。その点 iPhone ならたとえ旧機種であってもデザインが良いので格好悪いということはない、と認識されている。(*4)

私にとって何が衝撃的だったかというと、ポイントの1番目である。若者はもはや iPhone をイノベーティブな要素の詰まった革新的なデバイスだとは全く思っていない。そうではなくて実用的で信頼できる、いわばスマホとして安全パイだと思っている。「普通の中の普通、普通の王道」である。

悔しいことに私が iPhone 5 を使った感覚に非常に近い...  やはりこれが一般的な感覚なのだろうか?

ということで販売台数の変化等も調べてみることにした。

続きます....




*1 ちなみに彼女は父親の都合で Xperia Pro を使っており、友達からは変種と見られている。SIM Lock なしで比較的高価なので普通は高校生は持っていない

*2 2012年10月29日現在、AT&T のオンラインショップでは iPhone4/8GBが$0.99、iPhone4S/15GBが$99.99 。共に2年縛りの契約が条件

*3 実はもう1つ要素があるらしく、それは「ゲーム」であるらしい。本来であれば携帯ゲーム機を買っていた層が「どうせ iPhone かえばゲームもできるんだから」「みんなと同じゲームで競えるし」ということで iPhone を買う。Android スマホでないのは、本文に書かれている2つの理由による

*4 2つめのポイントは、さすが Apple のデザインは素晴らしいとしか言いようがない。いまだに旧機種を中古品として売る時にそれなりの値段がつくのもすごい







2012年10月26日金曜日

iPhone 5 は普通のスマホになってしまったのか?ーその1

iPhone 5 は普通のスマホになってしまったのか?(1)


思い起こせば iPhone 5 発表の翌日に予約を入れ、9月24日に無事受け取ることができた。電源ボタンがうまく押せないという初期トラブルがあったものの、数日後には Apple Store で交換をしてもらい、仕事以外の個人用の電話として使い始めた。

1週間ほど使っているうちに、何となく違和感を感じ始めた。すべては予想した通りに動作しており、マップの不具合も自分が使う範囲ではそう不満も無く、この違和感はどこから来るのだろうと不思議だった。それから数日考えた後、見つけた答えは

「使っていて感動しなくなったから」

だった。


「え、たかがスマホでしょ?何で感動するの」という声が聞こえてきそうだ。しかし私は iPhone 3G と iPhone 4 に感動していたのだ。
それまでのフィーチャーフォン(日本でいうガラケー)やウインドウズフォンとは異なり、最高のユーザーエクスペリエンスを提供するために考え抜かれた画面サイズ、アイコン配置、ホームボタン等、使い込むほどに「本当に良く考えられている」と感服し、「ここで校反応してほしい時に思った通りに反応してくれる」と歓喜し、そのような”いわゆる”最先端デバイスを自分が使えることに感謝した。それらを「感動」と言わずに何と表現すればよいのか。

私は自分のミスで iPhone 4 を紛失してしまい、それはついに見つからなかった。それから今回 iPhone 5 を購入するまでは iPhone ではなく Android ベースのスマホを仕事用だけでなく個人用としても使用してきた。Android ベースのスマホを開発している仕事上、自分の中では iPhone は暗黙のうちに追いつき追い越す目標として君臨していたのだった。
それだけに、iPhone 5 に関しては自分で意識はせずとも相当な期待をしていたはずだ。

iPhone 5 を使っても感動しなくなったということは、つまり iPhone が普通のスマホになってしまったということだろう。自分としてもそれに気づいたことが驚きだった。
これは、単に自分が iPhone のユーザーエクスペリエンスに慣れてしまったからなのだろうか。それとも iPhone 自体がすでに普通のスマホとして広く使われている、ということなのだろうか。


まわりの人たちの反応

私のまわりにも iPhone 5 を購入した人はおり、その人たちの反応を探ってみることにした。

初めの一人、仮に A さんとしよう。彼にとっては初めての iPhone で、購入前の意気込みは凄いものだった。残念ながら彼の自宅のWifiルーターとの相性が悪かったらしく、iPhone を繋ぐと他の機器の接続が解除されてしまう状態になってしまったらしい。
個体差かもしれないので交換してもらうか、AirMac Express を購入して専用のルーターにする等の提案をしてみたのだが、結局1週間程度で手放してしまった。
A さん曰く、使ってみて楽しかったけれどそこまでして持っておく必要も無いだろうと思った、とのこと。

二人目の B さん。彼は自他ともに認める Apple ファンで、iPhone も代々使用してきている。ユーザーエクスペリエンスやコンテンツ、プログラミングにも造詣が深い。その彼曰く「なんか、夢中になれないんだよな、以前と比べて」と話しかけてきたのでびっくりした。それでも日常的に使用しているわけだけれども。

この二人はたまたまネガティブな印象を持つ人達だったという事なのだろうか。

その他、購入がまだの人に iPhone 5 を見せても、「ふむふむ、やっぱり実物を見るとちょっと縦方向に長くなったね」等えらく冷静なコメントが返ってくることが多い。
iPhone 4 の時のように「ををーっこれね!」という興奮した反応は非常に少ない。
やはり、すでに iPhone が普及しきってしまって新鮮味がなくなったから、なのだろうか?

そのような事を考えていると、ここでとある女性が衝撃的な発言を!

続きます...



はじめに

ブログについて
コンピュータ業界に入ってからはや幾年月、携帯業界に関わってからもすでに十年以上になります。
次々と新しいコンセプトや製品サービスが世の中に生まれ、それが少しも途切れない非常にダイナミックな環境の中にいることが面白く、ここまでこの業界に居続けることができたと思っています。
十年ほど前にシリコンバレーに移住しました。それまでの日本からアメリカを見ていた立場とは逆にアメリカから日本を眺めることになり、個人的にはより多くの視点を持てるようになりました。

このブログでは、これまでに自分が体験してきた事を踏まえて、ITおよび携帯業界の中で主に自分が関わったり興味があるテーマについてまとめて行きます。


ブログ主経歴
日本DECにて、ソフトウエアエンジニアとしてキャリアをスタート。自動倉庫システムの開発やシステムサポート業務を経験。
同社勤務中に Web の爆発的な発展に遭遇し、その可能性に圧倒される。意を同じくする人たちと共にWebベースの業務ソリューション提案や開発を行う。 また黎明期の携帯電話に着目し、携帯電話とEメールを組み合わせた製品を開発し販売のサポートを行う。

携帯Eメールの次は携帯インターネットだ、という予想の元、1999年当時 Phone.com という名前だった OPENWAVE systems に入社。
日本オフィスにて、キャリア担当のプログラムマネージャとして某キャリアの WAP システムの導入および WAP2 システムの立ち上げを担当。
また WAP2 システムに関しては特に端末側ソフトウエアの中心であるモバイルインターネットブラウザの日本市場向けバージョンの開発を協力に推進。現在も(多分、ガラケーで)使用されているブラウザの基礎を作った。

2002年カリフォルニアの OPENWAVE 本社に移籍するため家族と共に渡米。以降日本市場向けのモバイルブラウザの提供やOPENWAVE製クライアントソフトウエアのプロダクトマネージメントを担当。

2009年に当時 Sony Ericsson と呼ばれていた現 Sony Mobile Communications に入社。シリコンバレーオフィスにて Software Project Manager として勤務中。


将来の夢
それを使うことによってユーザーの生活が楽しく、より快適に、より幸せを感じるような、真の意味でインパクトのあるモノやコトを提供すること。

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